ヘントの祭壇画と額縁について

『ヘントの祭壇画』は、北方ルネサンスの始まりを告げる傑作といわれています。それぞれのパネルは、額縁状の板によって縁取られています。彫刻による装飾や金箔で豪華に仕上げが施されているわけではありません。どちらかというと質素で地味です。何の変哲もない木で作られた枠のようです。

平枠を加工して、絵画との境目に段差を設けた程度で、とてもシンプルなつくりです。同時代のイタリアの祭壇画装飾に比べたら、まったく違うものです。ヤン・ファン・エイクは、『ヘントの祭壇画』以降、聖人や聖母画だけではなく、個人の依頼による肖像画もたくさん描いています。

それらの額縁には、トロンプルイユの技法で大理石を模した模様や鼈甲の柄のようなパターンを本物のように描かれています。さらには、銘文や自身の名前、制作年代なども書いたものがあります。