19世紀ヨーロッパのオリジナル額

昔から評価のわかれる額縁と絵画の関係で興味深い時期がありました。それが19世紀後半にみられた「オリジナル」額の使用です。ここでオリジナルという言葉を使用していますが、これはある絵画独自につくられたものという意味で使われているのではなく、ユニークなデザインのものが登場したという程度の意味合いと解されています。当時は新たに描かれた絵を、昔作られた格調高い額に入れるのが流行っていたとされる時期であったため、このようなオリジナルがもてはやされたのかもしれません。そんな当時をうかがい知る作品が、ロンドンにあるナショナルギャラリー所蔵のPierre-Auguste Renoir(ピエール・オーギュスト・ルノワール)作とされる「A Bather(水浴)」に使用されている額縁です。当時としては珍しい金箔処理された表面にグレーの塗料を塗ることで金色を敢えてクスらせたり、こすって曇らせるという技法で、当時の印象派の絵画とよくマッチした額を創造しています。まさに感性の同じ画家自ら製作することで達成された総合的な一体感を作り上げている作品に仕上がっています。